第57回21世紀構想研究会
来る3月2日(木)、21世紀構想研究会を開催します。
今回は岐阜大学学長、黒木登志夫先生から「生命科学の新しいパラダイム」
の演題でご講演いただきました。
記
日時:2006年3月2日(木)午後6時~9時
会場:日比谷プレスセンター9F 会議室
演題:「生命科学の新しいパラダイム」
国立大学法人 岐阜大学学長 黒木登志夫
21世紀構想研究会 2006年3月2日講演抄録
生命科学の新しいパラダイム
国立大学法人 岐阜大学学長 黒木登志夫
最近実験に失敗した夢を続けてみた。シャーレの中で培養細胞が増えていない。タン
パクを電気泳動しても、バンドがきれいに分離しない。実験の現場から離れて5年に
なるのに、まだ研究に未練があるのかも知れない。しかし、直接研究をしなくなる
と、よく見えてくるものもある。ゲノムを基盤とした現在の生命科学の戦略が決して
間違っていないことはよく分かっているが、それだけでよいのだろうか、と考えはじ
めた。
生命科学は本来、もっと広く深いものではなかろうか。生態学、生物多様性のような
平面と、進化、歴史の時間軸を考える『生態史観』が、今後も重要性をますであろ
う。
ゲノムが分かればすべてが分かる、という考えにも疑問をもちはじめた。ゲノム配列
とスーパーコンピュータがあれば、生命を再現できるのだろうか。複雑なものは複雑
なままに理解するという、物理学の『複雑系』の考えから学ぶことも多いはずであ
る。
この世の中は、すべてネットワークで構成されている。生態系、タンパク相互作用、
シグナル伝達、いずれをとっても、ネットワークが重要な役割を果たしている。ネッ
トワーク理論は今後の生命科学を考える上で重要なテーマになるであろう。
東北大100周年記念セミナー『生命の質の飛躍』(05年12月5日)特別講演の
際考えたことをお話し、21世紀構想研究会の皆さんのご意見を伺えれば幸いであ
る。